声の症状で調べる
声の症状から病名を調べる
01ガラガラ声
声帯そのものに異常があると、声帯の振動が不規則となり、ガラガラとした割れた声になります。(声帯ポリープ、声帯結節、声帯嚢胞、声帯瘢痕、ポリープ様声帯、声帯白斑症、喉頭がんなど)。また、声帯が過剰に閉じた場合にもガラガラ声になることがあります(内転型けいれん性発声障害や過緊張性発声障害など)。
02かすれ声
声帯がしっかりと閉じないことが原因で起こります。声帯にできた疾患が大きくなった場合(声帯ポリープ、声帯結節、声帯嚢胞、声帯瘢痕、喉頭がんなど)や、声帯が痩せている場合(声帯萎縮症、声帯溝症)、声帯の動きが制限されている場合(声帯麻痺、外転型けいれん性発声障害)などがあります。
03声がつまる、震える
声帯が閉じすぎていることが原因で起こります(内転型けいれん性発声障害や過緊張性発声障害)。また、声帯が痩せていたり(声帯萎縮症)、外転型けいれん性発声障害で声がかすれてしまうのをかばうため、無理に力が入って起こることもあります(代償性の過緊張性発声障害)。異常を指摘されないことも多く、見過ごされがちな症状です。
04声に力がない
声帯にハリがない場合(声帯萎縮症)や声帯がしっかり閉じない場合(声帯麻痺、外転型けいれん性発声障害)に起こります。精神的なストレスにより、声帯の動きに変調をきたすこと(心因性発声障害)で起こることもあります。
06声が低い
蛋白同化ホルモンや男性ホルモンの過剰摂取により声帯の厚みが増すことで起こります(男性化音声)。また、声帯が過剰に閉じてしまう場合(過緊張性発声障害や内転型けいれん性発声障害)でも声が低くなります。
07声が高い
声変わりが起こらなかった男性に多い症状です(変声障害)。また、一部の機能性発声障害でも起こります。
病気の名前から調べる
声は声帯の層構造(粘膜と筋)が保たれ、かつ声帯が適切に動くことで良好な声となります。声の異常は、声帯そのものに異常がある疾患と、声帯の動きに異常がある疾患に分けられます。
声帯そのものに異常がある病気
01声帯ポリープ
声の使いすぎや炎症により、声帯が部分的に腫れている状態です。粘膜が内出血していることもあり、ガラガラ声やかすれ声になります。できるだけ声を使わないようにし、炎症や腫れをとる薬を内服することで、消失することが期待できます。ポリープが消失しない場合には、「外来喉頭腫瘍・ポリープ摘出術」や、「喉頭微細手術(ラリンゴマイクロサージェリー)」を行います。また、ステロイド(ケナコルト®︎)の注射を行うこともあります。
02声帯結節
大きな声を使いすぎることにより、左右の声帯どうしがぶつかりあい、「マメ」ができている状態です。声帯がしっかりと閉じなくなるため、かすれ声となります。また、高い声や裏声が出しにくくなります。教師や保育士の方に多く見られます。発声の習慣に伴ってできた異常であるため、声の安静を保つこと必要です。音声治療や、ステロイド(ケナコルト®︎)の注射を行うこともあります。
03声帯嚢胞
声帯の粘膜内に風船のような水膨れができた状態です。ほとんどの場合、原因は不明です。声帯の振動に左右差が生まれるため、ガラガラ声になります。治療は「喉頭微細手術(ラリンゴマイクロサージェリー)」による摘出のみです。
04声帯瘢痕症
声帯が高度なダメージを受け、硬くなった状態です。自然に起こるものではなく、火傷や手術など、何らかのきっかけがあります。声のカスレが強く出現し、常に力を入れて声を出す必要があります。治療が難しい疾患です。当院ではbFGF(フィブラスト®︎)の注射を行っております。
05声帯萎縮症・声帯溝症
声帯がやせている、または溝ができているように見える状態です。特に男性に多く見られます。声帯の粘膜や筋肉のボリュームが不足しているとされ、声に力がない、かすれが強いという症状の訴えがあります。ただし、実際に粘膜や筋肉のボリュームが不足していることを確認したデータはわずかで、声帯筋の過緊張や低緊張が原因になっている例もあると、当院は考えております。個々の状態に応じて、声帯注射(ヒアルロン酸、bFGF、自家脂肪)や手術治療(甲状軟骨形成術Ⅲ型、甲状軟骨形成術Ⅳ型)などを行います。
06ポリープ様声帯
声帯がブヨブヨと腫れ、ガラガラ声しか出ない状態です。喫煙によって起こる事がほとんどです。禁煙にてある程度症状は改善します。改善しない場合には、喉頭微細手術(ラリンゴマイクロサージェリー)により腫れを軽減させます。
07声帯白斑症
声帯に白い病変が付着し、声に異常をきたします。前がん病変のこともあるため、発見された場合には定期的な観察が必要となります。
08喉頭がん
喉頭にできる悪性腫瘍です。声帯に病変がある場合には、早い段階で声の不調を感じます。声帯以外の部分に病変がある場合には、初期にはあまり症状がなく、病変の増大と共に声の不調や飲み込みにくさを自覚するようになります。発見された場合にはできるだけ早く治療が必要です。当院では喉頭がんの治療は行っておらず、専門施設に紹介致します。
声帯の動きに異常がある病気
01声帯麻痺(反回神経麻痺)
声帯を動かす神経(脳神経、迷走神経、反回神経)が麻痺し、声帯が動かなくなった状態です。発声時に声帯が閉じないため、極端にかすれた声となります。飲み込む時にムセることもあります。神経が麻痺する原因には首や胸の腫瘍(甲状腺がん、肺がん、食道がんなど)や脳の異常(脳腫瘍、脳梗塞など)がありますが、原因不明の場合もあります。麻痺の原因治療が最優先で、原因治療が終わった後に手術治療( 披裂軟骨内転術、 甲状軟骨形成術Ⅰ型)で症状を改善することができます。原因が不明の場合には、神経の再生が期待できる半年間は経過観察を行います。経過観察中のかすれ声に対しては、声帯への ヒアルロン酸の注射を行うことで一時的に症状を改善させる事ができます。
02内転型けいれん性発声障害(ADSD)、過緊張性発声障害(MTD)
発声時に声帯が過剰に閉じることで、声が震えたりつまったりします。中には、声が低くなったという訴えの方もいらっしゃいます。音声診療ガイドライン上、ADSDは声帯の動かす神経の異常興奮が、MTDは声帯を含む首の筋肉の緊張が原因とされ、独立した別々の疾患と定義されます。しかし、症状や声帯の動きは非常に似通っており、両者を明確に区別するのは困難です。日によって症状に波があり、医療機関を受診した際に症状が出ず、異常なしと診断されているケースも多く存在するようです。一般的には、両者ともまず音声治療を行い、効果が十分でなければ ボツリヌストキシンの声帯注射や手術治療( 甲状軟骨形成術Ⅱ型や声帯筋切除術)の適応となります。
国内外において音声専門の言語聴覚士の数は限られており、適切な音声治療を受けられない方が多く存在するようです。当院では、オンライン診察によって遠方にお住まいの方に対応しております。
03外転型けいれん性発声障害
発声時に声帯が外側に動いてしまい、声が裏返り、空気がもれて力が入らない状態になります。話せば話すほど症状が強くなったり、症状をカバーしようとするあまり、逆に声が震えたりつまったりすることもあります。原因不明の稀な疾患であり、症状が安定しないために異常なしと診断されているケースが多く存在するようです。世界的には声帯を外側に動かす筋肉へのボツリヌストキシン注射が行われていますが、効果はあまり高くないようです。音声治療が有効なこともありますが、効果は限定的です。当院では、個々の症状に応じて手術治療を積極的に行っております。他院で有効な治療を提供されなかった場合でも、是非ご相談下さい。